【34・後編】見たことのない新しい世界を求めて「イサム・ノグチ 発見の道」展/東京都美術館

2021年10月2日

いいもの探し【34・後編】東京都美術館(美術館)

「発見の道」(1983-84年)



私は今回の展覧会に行くのを個人的な理由でも楽しみにしていたところがあるんです。

私が幼稚園生くらい~小学校4、5年生頃までですかね、夢中で石を集めていました。世間ではローラースケートが流行って近所の子が乗り回して遊んでいても(年代がわかりますね!)、私は暇さえあればひたすら庭の地面を掘って、お目当ての石を探していたという・・・。今は昔ほどの熱狂はありませんが、石には親しみを感じますね。この展覧会のポスターにも石の作品がいくつか載っていたので、密かに楽しみにしていたんです!

上の写真は、イサム・ノグチ晩年の作品「発見の道」です。展覧会のタイトルにもなっているのですが、イサムの人生はこのタイトル通り、様々な出会いと発見に溢れていました。前回の続きになりますが、イサム・ノグチの歩いてきた軌跡を一部、作品の感想などを交えてご紹介していきたいと思います。(前編はコチラ!

様々な出会い

今回の展覧会で作品と共にイサムの歩みを知っていくと、その過程でイサムが出会った人たちの顔ぶれに驚きます。

イサムは大学ではもともと医学部を専攻していましたが、彼と同じ大学出身の医学者、野口英世にアドバイスを受け、医師ではなく芸術家になる道を選びました。その後イサム27才のとき、長い間複雑な間柄であった父親との再会を果たし、それをきっかけに、父から彫刻家の高村光雲らを紹介されます。他にもフランク・ロイド・ライト、フリーダ・カーロ、丹下健三、岡本太郎ら、第一線で活躍する様々な人たちとの交流を重ねました。イサムの持っているバイタリティ、自分の人生を自ら切り開く力を感じさせますね。

晩年、イサム・ノグチ彫刻の到達点と言われる“石彫”を見出すきっかけとなった、石工の和泉正敏(2021年9月13日逝去)との出会いも、その後の作品の変化を見ても、かけがえのない出会いだったと言えると思います。

※今回、石彫の作品も展示されていたのですが、撮影禁止でした

「化身」(1947年 ブロンズ)複数のパーツの組み合わせによる彫刻

「下方へ引く力」(1970年)大理石 こんなポップな印象の作品もありました
「無題」(1988年頃)花崗岩 ノミで打たれた凸凹面の質感と磨かれた面、石本来の色とのコントラスト
「淑子さん」(1952年頃)1951年に結婚した元妻 山口淑子(李香蘭)をモデルにしています。愛情を感じる作品です

幼少期からいじめられ、生い立ちからのアイデンティティの葛藤に苦しみながらも、なぜイサムは人間に対して諦めを持たず、出会いを重ねていけたのでしょうか。

イサムの印象的な言葉があります。彼が高校の卒業写真に残した言葉です。

「大統領になるよりも 僕は、真実こそを追求する」

まだ若き頃のイサム青年が言ったこの言葉は、彼の生き様に見事に表れているなぁ!と思いました。彼は人との交流が得意だったのか、好んでいたかどうかはわかりません。でも、自分と同じように一つの道を精進している、才能ある人たちとの出会いは、イサムに刺激を与えてくれて、まだ知らなかった新しい世界への道しるべとなっていたのではないでしょうか。

「発見の道」を歩いていった人

晩年、イサムと共に作品を作ってきた石工の和泉正敏さんが語っていました。

「昨日と同じ作業、同じような仕事をしてしまった日は、先生(=イサム)は機嫌が悪かったです。新しいことを見つけるか、自分が今まで見たこともなかったようなのができると、すごく喜ぶ」

生涯、“彫刻とは何か”を貪欲に追求し、日々新しい発見を追い求めた人。イサムは、彫刻の本質の一つの答えを、作品を通して表していたように思います。私が展覧会で感じた、作品から発せられる緊張感やエネルギーは、彼の意志そのものがそこにあるからではないかなぁ、そう思いました。

「黒い太陽」(1967-69年 花崗岩)石工の和泉正敏と共に作り上げた作品。実際に見ると、パワースポットのようなエネルギーを感じます
「無題」(1988年頃)花崗岩 磨き込まれた切断面。それぞれ色・模様が違います
「ヴォイド」(1971年)仏教用語で“すべてのものの存在する場所”という意味。石なのに柔らかそうな質感で、でも周りには緊張感が漂う不思議な作品

冒頭にも載せた作品「発見の道」 「石が教えてくれる彫り方がある」と、晩年は石に手を加えるのは最小限でした

< 最後に個人的感想を >

会場で流れていた動画に映っていたイサム・ノグチは、世界的な芸術家然とした偉そうな態度は全くなくて、率直に言えば、近所にいそうな気さくなおじいちゃんといった様子でした。香川県の牟礼(むれ)という所にあるアトリエで、若い職人さんたちと一緒に目をキラキラさせながら作業をしていて、自分の作りかけの作品に入ったり、楽しそうにおどけてみせたり。私が抱いていた気難しそうなイメージとは違っていて、これはみんな好きになってしまうわ~、と思いましたね。

そして展覧会の本当に最後、嬉しかったことが!

石は濡れると隠れていた模様が浮き出てきたりして、また違う表情を見せるんですよ(小さい頃、集めた石を水に濡らしていたので知っている)。なので、「この石(=作品)たち、濡れたらどんな感じか見たいなぁー」と思っていたら・・・会場出口手前に設置された巨大スクリーンに雨に濡れた、まさにこの石たちが映し出されて、うわっ!とテンションが上がりました。濡れた石の静けさと、雨の風景とが混ざり合って、何とも心地いいんです。「地球だってもともと石からできている」そんなイサムの言葉を思い出しながら、風景に溶け込んでしまいそうな石をいつまでも眺めていました。


【お店情報】
東京都美術館
〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
公式ホームページ(リンク

※東京都美術館へお越しの際は、事前にHP等で展覧会のスケジュール、美術館の規定・お願いをご確認の上、ご来館をお願い致します。

作品(ヴォイド)の向こうには・・・私がいるー!コジマが撮ってたみたいです・・・

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