【34・前編】“あかり”や折り紙も彫刻⁈「イサム・ノグチ 発見の道」展 / 東京都美術館

2021年10月2日

いいもの探し【34・前編】東京都美術館

「あかり」インスタレーション

イサム・ノグチ。20世紀を代表する芸術家であり、彫刻家です。

ナンテ、如何にも知ってる風に書いていますが、私はイサム・ノグチ氏をほぼ知らず、初めて名前を目にしたのが照明であったため、“照明をデザインして作っている人”だと思っていました。ただ、その照明は素晴らしく、静けさを湛えながらもどこか有機的で、そして日本的な美しいあかりを作る人だなぁ、と思ったのを覚えています。

でもある時 弊社のスタッフ ニルセンと話をしていたときに、彼女がイサム・ノグチを、リスペクトしている大好きなアーティストだと話していたんですね。話を聞いていくと、私が思っていた感じとどうやら違います。「ん?イサム・ノグチって公園も作っているの?」

今回、東京・上野の東京都美術館で、イサム・ノグチの展覧会が開催されることになり、ぜひ行きたいと思いました。

イサム・ノグチとは何者なのか。そういえば、日本人の名前だけれども日本の方なのだろうか。作品を見たいという以上に、その人(=イサム・ノグチ)を知りたいという思いで展覧会へ行って来ました。

「イサム・ノグチ 発見への道」展を見ていく中で、イサムを形作ってきた事柄の数々が、彼を知るキーワードのように私の心の中に残りました。そのいくつかを、作品を交えて紹介していきたいと思います。

自己のアイデンティティとの葛藤

「幼年時代」(1971年)

1904年イサム・ノグチは日本人の父(詩人)と米国人の母(詩の翻訳者)との間に生まれました。イサム3歳の時に母と日本へやって来ますが、父親と一緒に暮らすことはありませんでした。日本ではアメリカ人としていじめられ、アメリカでは日本人と言われて受け入れられず、アイデンティティの葛藤に苦しみました。

上の写真の作品「幼年時代」は、石にノミで無数の穴をあけ、正面だけツルツルになっています。イサム少年の頭の中・胸の内がこの作品を見て、何か伝わってくるように思えました。傷付けながらフツフツと無数に湧き上がるのは怒りなのか、疑問なのか、焦がれる思いなのか。今にもツルツルの面を覆い尽くしそうな勢いです。でも、覆い尽くされていません。

彫刻にできることは何か

イサムのライフワークとなった「あかり」シリーズ

会場の中央には、150灯もの「あかり」によるインスタレーションが点灯していました。わぁっと見上げると心地よい浮遊感が!15分間のピッチで点滅を繰り返しているのですが、明かりが消えてもその存在感は消えず・・・しばらくじーっと佇んていたい気分になります。

この「あかり」シリーズは、イサムが岐阜提灯から発想を得て制作されました。彫刻は昔から木や石、金属で作られるものですが、イサムは光で彫刻を創ろうと思い付きます。“固くて重いものだけが彫刻ではない”という気付き。彼は、“暮らしの空間を光の彫刻で変えたい”と思っていました。

会場では、生前イサムへのインタビュー映像が流れていたのですが、その中で彼はこう言っていました。

僕の彫刻は高いでしょう?でもこのあかりの彫刻なら、安価に手ごろな値段で手に入りやすいでしょう?

一部の限られた人だけでなく、イサムは彫刻というものをごく一般の人にも、もっと身近に感じてもらいたかったんでしょうね。

日本文化の影響と、イサムの内に存在する両極端なもの

イサムと父親との関係は複雑でした。外国で暮らしていたイサムは26才の時、「野口の姓を名乗ってはいけない」と父親から拒絶されています。しかし、父の故郷 日本は、イサムの創作活動に常に刺激を与え続ける国でした。

写真の作品は、切り紙や折り紙からインスピレーションを受け、平たい金属の板を折り曲げたり貼り合わせたりして作られた金属彫刻です。「軽さ」がキーワードになっています。

「チャイニーズ・スリーヴ」(1960年)折り紙っぽい?
「原子の積み藁」(1982-83年)切り紙っぽい?
「雲の山」(1982-83年)
「坐禅」(1982-83年)
「プレイスカルプチュア」(1965-80年頃)遊具彫刻=体感する彫刻。排水管から作られている

「彫刻の重さと軽さ」「父親への憎しみと愛情」「アメリカと日本」。常にイサムの中には両極端なものが同時に存在していたように思います。そして、それはハーフで生まれたイサム自身でもあったのではないでしょうか。違うものが混ざり合って起こる化学反応によって、今まで見たこともない新たな作品が生まれていったのかなぁと、作品を見ていて思いました。



今回、イサム・ノグチについて何も知らなかった私が熱く(?)語ってしまいました。「イサム・ノグチ 発見の道」展を見に行って、彼の生き方にとても衝撃を受けまして、これは展覧会の様子や作品だけではなく、彼の生きてきた道のりも一緒に紹介したいと思ったんです。

その芸術家の内面や、作品ができるまでの過程を知ると、「作品」としてしか見ていなかったものも、見え方が変わるかもしれません。

後編は、イサムの様々な出会いと晩年の作品(一部)を紹介します。お暇なときに、時間つぶしに、よろしければどうぞ!

【お店情報】
東京都美術館
〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
公式ホームページ(リンク

※東京都美術館へお越しの際は、事前にHP等で展覧会のスケジュール、美術館の規定・お願いをご確認の上、ご来館をお願い致します。

「びっくり箱」(1984年)

【いいもの探し】ライファ大塚では、お客様だけでなく私たち自身も心豊かな暮らしを送るために、常に「良質なもの」(商品、サービス、お店、建物、アイデア、…etc.)を探すアンテナを張っていたいと考えています。リフォームに直接関係あるもの、ないものに関わらず「これ、いいね」と思うもの。もし見つけたらぜひ皆さんにも紹介したい!仕事の合間を縫って、社内でも探求心の強いケイコ、コジマのコンビが事務所を飛び出し、ゆるくブログでレポートします。